「一般財源化リスク」
2008/03/30の紙面より
二十七日夕刻、福田総理が平成二十一年度から道路特定財源を廃止、一般財源化する方針で野党に協議を呼びかけたので、今回は一般財源化について解説する。
最近発覚した数々の道路特定財源の無駄遣いは確かに大問題なので、「特定財源だから無駄遣いが多いに違いない」と考え、特定財源の廃止を求める国民の気持ちは良く分かる。しかし、角を矯(た)めて牛を殺すことにならないか心配は尽きない。
無駄遣いをなくすには、責任を負うべき政治家や公務員を厳重に処分し、関係機関に再発防止を約束させるとともに、幹部候補の公務員は必ず中小企業で一定期間就業させるなど、国民の目線に立った公務員養成システムを周到に用意すれば足りると考える。
- 格差の固定 -
一方で、全額一般財源化から生じる二つのリスクは非常に大きい。第一は、都市と地方の格差の固定、拡大のリスクである。「道路にしか使えない財源と何にでも使える(一般)財源とどちらがよいか」という設問は問題の理解を妨げる。誰でも後者がよいと答えたくなるが、それは配分される予算額が減らないことを暗黙の前提としている。
道路に特定された財源だからこそ、これまで優先されてきた三大都市圏の道路整備が一段落すれば、いよいよ次の十年で地方にも国から重点的に道路予算が回ってくるのであって、今道路という枠をはずして全額一般財源化すれば、三大都市圏の道路整備の次の優先順位は、残念ながら鳥取県をはじめとする地方の道路整備ではなく、(人口も、議員の数も多い)三大都市圏の福祉、教育となる恐れが大きい。
地方にとっては、「今後十年、国から道路の名目でドンと予算を受け取るのと、何に使ってもよいがかなり目減りした予算を受け取るのとどちらがよいか」と問われていると言ってよい。
都市選出議員が多い一般財源化論者の皆さまは、与野党を問わず「地方の財源は守る」とおっしゃるが、私から見て説得力のある地方の財源を守るための新たな仕組みの提案はこれまでのところない。もし国から地方に配分される予算が大幅に減額されれば、有効求人倍率と相関関係を持つ道路整備のような格差に直結する重要な投資も十分行えず、都市と地方の格差が固定、拡大される。
- 交通安全脅かす -
第二は、文字どおり国民生活の安全を脅かすリスクである。一九八〇年代の米国では頻繁に橋が落ちた。橋の維持補修費を景気の波に合わせて増減させたためとされる。
特に、地震、台風が頻発するわが国においては、自然災害により阪神・淡路大震災の時のように多くの橋や高速道路の橋脚が崩落することを防ぐため、特定財源制度を堅持して安定的な財源を確保することにより維持補修、耐震化に万全を期す必要が極めて大きい。
私は、総理が打ち出した一般財源化の方針が、上記二つのリスクを顕在化させないよう最大限努力し、かつ、祈る。
※このホームページのリレーコラムについては、縦書きの記事からの転記のため、このような漢数字の記述となっております。